一針多助 動物のための鍼灸漢方広場

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今月の先生

第3回東大和獣医科病院 中医獣医師|兼子 祥紀 人間と同じく構えず気軽に治療を受けてみて!
中獣医師としてのキャリアは何年ですか?
約5年です。
症例件数は月間にどれくらいですか?
月間だとおよそ100症例になります。
獣医師になろうと思った理由を教えてください。
子供の頃は、虫好き&ねこ大好きで、好きなことを仕事にしたいと漠然と思っていました。僕の修行時代はブラックな労働環境でしたので、途中めげたりもしましたが、今は好きなことしかしていませんし、好きなことをさせてもらえる環境に感謝しています。
中獣医師を目指すようになったきっかけはなんですか?
大学病院で研修医や研究生の経験もありバリバリやっていましたが、ひとりの町医者としてできることの限界に悩んでいました。一人で全科目を診ているので、力不足を感じる時もありました。だからこそ学びが必要で、できれば一人で全部やり切れるような学問を求めていました。
そんな時にふと、今の恩師の一人である西依三樹先生(ミ・サ・キ・動物病院 院長)の「鍼灸・漢方基礎セミナー」を受講したことが今に繋がっています。最初は中医学をあまり信じていませんでしたが(笑)。でも習ったことをやってみると面白いように結果がついてきましたし、学びを深めるほど見える世界が広がってくるのでやめられなくなりました。
中獣医師を目指し学ぶ上で大変だったことを教えてください。
僕は、日本獣医中医薬学院の本科・推拿科の卒業生(現在マスターコース在籍中)なのですが、学院長・山内健志先生を始め、講師の先生方の講義が懇切丁寧でわかりやすいので、まったく苦労せずにここまで来ることができました。今の自分があるのは、先生方のご指導の賜です。また、勉強の為によく休診するのですが、こんな僕を信じてついてきてくださる飼い主さんにも感謝しています。
先生が治療を行う上で最も大切にしていることは何ですか?
今ある症状のバックグラウンドを探るようにしています。なぜこうなったのか?をいろいろな視点(動物の体質や気質、食べ物、環境、飼い主さんの性格など)で考えて、治療を組み立てています。診断さえしっかりしていれば、治療でハズすことはないと思います。
そんな中でも最も大切していることは、「患者さんは、今、苦しんでいます。さらに苦しませるような事をしてはいけません。診察室のドアを開けて出て行かれる時、患者さんが笑顔で帰られるようにしなければなりません。」という、恩師の言葉です。
臨床現場で「やっぱり中医学はここが面白い!」と思えるような時はどんな時ですか?
個人的な興味として、獣医中医学では、「心と体は一つとして捉える」というところが面白いと思います。診療をしていると、からだの不調がこころに影響を与えたり、こころの不調がからだに影響を与えているのを感じます。
結果が目に見えてわかりやすいところでは、腰が弱って立てなかった子が目の前で立てるようになったり、不眠で困っていた子が落ち着いて寝られるようになったり、慢性の咳で苦しんでいた子の咳が減ったり、慢性の皮膚病変が治ったり、難治性の下痢が収まったり・・・挙げればきりがありませんね。
来院される方はどんな症状が多いですか?
獣医中医学では、精神的な不調によって引き起こされる病気を「内傷病」と呼ぶのですが、この内傷病が非常に多いと感じます。ストレスが一因と考えられる、痛み、痒み、内臓の不調などを日常の診療で多く経験します。ストレスを感じているのは、人間だけではないのだなと思いますね。
鍼灸治療において、先生が得意とする治療分野や症状・施述方法を教えてください。
病気を選ばず、オールジャンルで診ているのが強みと言えるかもしれませんね。ツボを取ることに囚われず、全身の調節(陰陽のバランス)を意識した治療を心がけています。
膨大な基礎理論に基づき、鍼灸漢方薬推拿(中国整体)気功を駆使してベストをつくしています。犬猫以外にも、うさぎやハムスター、フェレットなどにも鍼灸治療を行っています。
「動物の鍼灸治療」とはどういうものなのか、一般の飼い主様にも分かるように教えてください。
鍼やお灸、漢方薬、施術者の手指・気などを用いて、生き物が本来持っている生命力(気)に働きかける治療です。無理に抑えつけたり、電気を流したり、痛みを伴う治療ではありません。治療中にあくびが出たり、よだれや鼻水を垂らしたり、寝てしまう子もいるくらい気持ちのいい治療です。「病気」とは、「気」「病んだ」状態のことです。「気」を整えてあげると、自ずと本来の姿・機能を取り戻すのだ、という考えが根本にあります。
飼い主様にお願いしたいこと、またはアドバイスはありますか?
普段から動物の出しているサインを見逃さないで欲しいですね。動物の状態は、「目つき」「毛並み」に非常に反映されています。目に力がない、毛並みが悪くボサボサしている、体のどこかを触られるのを嫌がる、などの症状がある時は、早めに受診されると病気をこじらせずに済むと思いますよ。
最後に、先生の想いやメッセージをお伝えください。
鍼灸治療は、整形疾患に留まらず、治療範囲が幅広いのであまり構えずに治療を受けて欲しいですね。やってみると、いい意味でいろいろな変化を感じると思います。また、落ち着きがない、怒りっぽいといった精神の不調にもかなり効果があると感じています。こころとからだは繋がっているので、からだの治療をしていると、性格が穏やかになっていく例を数多く経験しています。
結果として、病気の子と共に飼い主さんも癒されて、元気になれる治療です。もっと獣医中医学の持つ世界観(天人相応:すべてのものは影響しあっている/天人合一:すべてのものはひとつ)が広がって、みんなが幸せになればいいなと願っています。

ありがとうございました。

東大和獣医科病院
獣医中医師 兼子 祥紀

住所 東京都東大和市立野1-641-1
電話 042-569-8746