一針多助 動物のための鍼灸漢方広場

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今月の先生

第4回オンペットクリニック 中医獣医師|大塚 菜美恵 必要なのは体のバランス調整と飼い主様の愛情
中獣医師としてのキャリアは何年ですか?
約9年です。
症例件数は月間にどれくらいですか?
月間でおよそ80~90件くらいです。
獣医師になろうと思った理由を教えてください。
子供の頃、家にはたくさんの生き物がおり、どの生き物ともとても仲良くしていました。本当に安易な理由かもしれませんが、動物好きで幼少の頃から動物に携わる仕事をしたかったのだと思います。小学校の卒業アルバムに「将来の自分は動物がいるところで働いている」と書いていたくらい(笑)。また、競馬場厩務員の父の仕事について行くと診療所で馬の獣医さんの話をたくさん聞いたり、臨床現場も見たりし、そこで獣医師の役割を知りました。この時には獣医師という職業を選んでいたのだと思います。
中獣医師を目指すようになったきっかけはなんですか?
幼少期から父の仕事の関係で競馬場獣医の仕事を見ていました。そこでは馬獣医界のパイオニア獣医師が競走馬に鍼灸治療をしており、馬はおとなしく治療を受けていました。注射でも薬でもない治療法があるのかとなんとなく思っていました。その頃から興味はあったのかもしれません。そして、最初の勤務先の副院長も鍼治療をしており、歩けるようになったり元気になったりするコの姿を見て中医学の素晴らしさを感じました。
また、薬漬けの動物たちを見て悲しくなり、少しでも薬が減って飼い主様や動物たちの負担が減る方法があれば、動物たちにとって無理のない治療方法があれば、と考えたのも中医学を学ぼうと思った理由です。
中獣医師を目指し学ぶ上で大変だったことを教えてください。
勤務医最初の頃は日々の診察で忙しくなかなか学ぶ機会を作れませんでした。運命的に恩師・山内健志先生と出逢うことができ、小動物中医学研究会のセミナー出席を繰り返しましたが、セミナーの為に休みをとるのも大変でした。その後日本獣医中医薬学院の設立と共に入学しました。日々の診療をしながら、基礎理論の専門用語を覚えたり、経絡経穴を覚えたり…。机上では学んだつもりでも実際に超小型犬から超大型犬、猫への応用にはいろいろ工夫が必要だったり…。そのコそのコの状態に合わせていくことは今でも日々勉強です。
先生が治療を行う上で最も大切にしていることは何ですか?
動物たちを怖がらせないようにとにかく優しく。動物たちが幸せになってくれるように「気」を込めて。まずは飼い主さんに安心していただけるように心がけています。飼い主さんが幸せであれば動物たちも幸せ。動物たちが幸せであれば飼い主さんも幸せですから。私と動物たち、飼い主さんの気が合うようにリラックスを心がけています。
臨床現場で「やっぱり中医学はここが面白い!すごい!」と思えるような時はどんな時ですか?
中医学はすごいなと思うことはたくさんあります。西洋医学では治らなかったコが治るのも経験していますし。検査では異常は見られなかったが、歩き方や全体的になんとなく調子が悪かったパピヨンちゃん。動物にも鍼灸があることを知り、飼い主様は半信半疑で1回目の鍼灸治療を受けられました(治療中は席を外していました)。次回の予約もひとまずされて帰ったのですが、2回目に来られた時「びっくりです!こんなにも効果があるなんて!調子とても良くて、周りの人から表情も良くなったねって言われるようになりました!ぜひ続けたいです!」と言って下さいました。
それからはこのコは鍼灸の虜(笑)!今や週1回治療を受ける常連さんです。他の飼い主様達に見られている治療台の上でも毎回スヤスヤと眠ります。病院に来るときと家に帰るときは笑っています。こんなことがあるととても嬉しいです。
来院される方はどんな症状が多いですか?
「どこか痛そう」というはっきりと痛みが現れているコたちです。他には、検査で異常はないがなんとなく調子が悪いコや、病を経験したシニアのコの健康維持も結構います。末期の緩和ケアとして「何かしてあげたい!」という目的で治療をすると、最後まで苦しまないケースが多いですね。シニアで緩和ケア状態のコを看取った後に、飼い主様から「お灸をしてあげたり最後まで一緒の生活を楽しむことができました。鍼灸に出会わなかったら暗い介護生活だったと思います。」と言って頂いた時は、本当に中医学をやっていて良かったと思いました。
鍼灸治療において、先生が得意とする治療分野や症状・施述方法を教えてください。
先述の「何かしらの痛み」「何か調子が悪そう」というコ(西洋医学のいわゆる“よくわからないコ”)に鍼灸治療をすると、良い方向になっていくのが分かります。とにかく《飼い主様もリラックス》を目指しています。動物が治療を受けているあいだ一緒に診察室で寝ちゃう方も(笑)。心地よい空間が作れているのだとわかり嬉しくなります。
「動物の鍼灸治療」とはどういうものなのか、一般の飼い主様にも分かるように教えてください。
動物たちも人と同じです。身体には目に見えない《経絡》といわれる《気(エネルギー)の通り道があり、その流れが何らかの原因によって妨げられたり、滞ったりすると病気が発生します。鍼やお灸でその通り道にあるスイッチのような《経穴(ツボ)を刺激することで、気の流れを回復させ、自然治癒力(生まれながらに持つ病気・ケガを治す力)を高めます。身体自身で治癒に向かうよう導くことを目的としています。自然治癒力が上がることで投薬効果も上がり、薬の量を減らす事も可能です。本来の最適な状態に戻していく身体に優しい治療なのです。
目に見えない《気》や《ツボ》などで成り立っており、(非科学的かもしれないが)実際の臨床現場において西洋医学では治す方法がないといわれる病でも、そのコそのコに合った何かしらの良い方法が見つかるのが中医学です。
飼い主様にお願いしたいこと、またはアドバイスはありますか?
動物たちにもストレスがあります。ストレスのない生活をさせて下さい。とはいえ難しいと思いますので、「そのコが好きな事(=ストレス発散できる事)を考え、してあげて下さい。
私は様々な地域の病院で勤務&往診をしていますが、「もしかしたらおうちの環境やかわいがり方が動物の負担になっているのかも…」なんて思うことがあります。飼い主様自身も健康で“バランスの良い生活”を意識すると、動物もストレスフリーな生活で長生きできると思います。
“痛みの少ない治療”として鍼灸があります。嫌がるコを押さえつける治療方法ではかえって治療自体がストレスになってしまい元も子もないのです。嫌がっては治るものも治らないのでは…?どうぞ気の合う先生と協力し合って、大切な家族である動物たちを治してあげて下さい。
最後に、先生の想いやメッセージをお伝えください。
自然治癒力を高めることで病が好転します。私は、動物たちの体全体のバランスを調整し自然治癒力を高めるお手伝いをさせて頂きます。あと必要なのは、飼い主様の“気(愛情)です。飼い主様も元気に過ごし、一緒に動物たちを元気にしてあげて、動物たちと幸せに暮らしましょう。

ありがとうございました。

オンペットクリニック(往診専門)
獣医中医師 大塚 菜美恵

住 所 東京都品川区
連絡先 on.pet.clinic@gmail.com
https://on-petclinic.jimdo.com

白金高輪動物病院(外来診療)
獣医中医師 大塚 菜美恵

住 所 東京都港区白金1-16-5
電 話 03-3280-7703(予約制)
http://www.forpets.jp

※その他にも東京・神奈川・千葉にて外来診療(予約制)を行っています。詳しくはホームページをご覧ください。